500円 絶版
再びオルガンを鳴らすために 明治二十三年に建てられた、上野の東京音楽学校奏楽堂は、日本でもっとも古い木造建築のコンサートホールです。
老朽化による取壊しを惜しむ声が強く、音楽家を中心に保存運動が実を結び、台東区が上野公園内に再建し、保存利用することになりました。
しかも、歴史的建造物としてのみならず、生きた音楽堂として活用する、という新しい文化財保存の方法が注目を集めています。 さて、この奏楽堂には、昭和三年、紀州徳川家の頼貞候によって寄贈されたパイプオルガンが備え付けられていました。
このオルガンは大正九年、イギリスのアボット・スミス社により輸入されたもので、パイプ総数一四〇〇本近い、わが国最初の本格的コンサート用オルガンであり、音色も大変に美しいものです。 このオルガンは当初、奏楽堂の舞台正面の飾りとしてだけ残される予定でしたが、是非ともあの美しい音色をよみがえらせたいという多くの要望に応え、台東区では修復の方向で検討しています。 しかしなんといっても長年の使用により、傷んだ部分も多く、昔の美しい音色を取り戻すためにはかなりの費用がかかると推定されます。とはいえ、パイプオルガン無しの奏楽堂では意味がない、と私たちは考えます。このオルガンは、日本のオルガン音楽の歴史を背負ってきた貴重なオルガンであるとともに、パイプオルガンとはそもそも建築そのものが楽器本体である、というような唯一の楽器だからです。 そこで、地元の皆さん、広く全国の皆さんの協力をいただいて、一人一人が小さな力を出し合って、この貴重な文化財を支えたいと思います。一人でも多くの方々に、パイプオルガン保存復活のための募金をお願いいたします。 昭和六十年四月六日 奏楽堂のパイプオルガンをよみがえらせる会 ※この小冊子は、「よみがえらせる会」の趣旨に賛同して、地元の地域雑誌「谷中・根津・千駄木」が企画・編集・発行いたしました
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