巻頭言アーカイブス

緊急事態宣言下の町で暮らしている

新型コロナウィルスの感染拡大防止のために千駄木の文京区立森鷗外記念館は3月2日から、谷中の台東区立朝倉彫塑館は3月9日から休館となった。千駄木の旧安田楠雄邸庭園は、木造の建物で窓を開け放ち、入館者数も制限しながら3月25日(水)まで公開を続け、3月28日(土)から休館。4月4日に予定していた川嶋信子さん演奏の「しだれ桜と琵琶の夕べ」も中止。こうした催しの収入は建物維持のための重要な財源で、演奏家の川嶋さんも公演機会がなくなり財政逼迫。


旧安田邸マネージャーのオオギがガーゼに換気扇用のフィルターを内蔵させ、鼻ワイヤーもつけた手づくりマスクを作っているのを見たのは3月12日。この日、5月3日に予定していた一箱古本市の延期の連絡が入った。 図書館内は使えなくなっても、インターネットでの本の予約と貸出を続けていた文京区の図書館も4月8日から貸出中止。これは痛かった。

私たちは個人商店が好き、昔からある八百屋、肉屋、魚屋、豆腐屋さんがなくなっては困る。 千駄木すずらん通りにある「スナックまつしろ」(実は3月末まで20年近くのバイト先)も休業中。お好み焼きの小奈やはテイクアウトでフル回転。町でよく見かけるようになったUber Eatsの配送自転車。ここに登録すると手数料は35%という。 

感心したのはいち早く立ち上げた「谷根千宅配便」http://tayori.info/yanesen-takuhaibin/のシステム。町の中のお店が次々に参加している。モリはHAGISOグループの未来のお食事券を買った。このシステムの詳しい紹介はここに。https://bunkyo.keizai.biz/headline/695/ 地域雑誌「谷根千」があったら私たちはどんな取材をしているのだろう。


利用していた西日暮里の富来湯が3月いっぱいで廃業、小さな銭湯で真ん中にある湯船がかわいかった。西日暮里駅に近いのでいい土地だ、もう解体している。4月からはこの時期だけ貸切湯を始めた谷中の澤の屋旅館のお風呂に入りに行っている。500円。

3月2日から休校となっている幼稚園や小中学校。文京区の学童保育や台東区のこどもクラブは閉じることなく、家庭の状況によって利用できているようだが、子どもが巣立ってしまうとこのあたりの感度は鈍い。息子が文京区の福祉センター若駒の里を利用している友人は、「利用自粛で週一回だけ通うことに 。時間も短いけれど、行かれる日があることで息子も私もほっとする。狭い家でずっと一緒だから一日の長いこと長いこと」


谷根千のこどもたち(すっかり大人だけど)の様子はどうだ。
フリーの舞台スタッフの仕事をするマキは仕事が皆無となり、最終の仕事現場の高知の父親の生家に居ついている。パティシエのユズコに66歳のメガネ屋を商う姉の誕生日ケーキや2歳になる子の大好きなピタゴラスイッチのクッキーを作ってもらった。力作。 映画好きの私は「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」や「仮説の映画館」 http://www.temporary-cinema.jp/を気にし、ミュージシャンのアキヒコはライブハウスを支援する。「あなたの"いつか"の楽しみが、ライブハウスの"今"を救う」 https://savethelivehouse.com/
サトコは『ビックイシュー』の販売者応援!「コロナ緊急3ヵ月通信販売」のお願い情報を知らせてくれる。ユタカは桜木町の古民家を直した。ヒロシは飲食店経営で家賃と給料に四苦八苦。製造業のガクは相変わらず自転車で出勤、出版社勤務のシュンはずいぶん前からテレワーク。フリーランスと比べれば、やはり寄らば大樹は安定している。

フリーの編集者を続けている私は、いま大正大学で出している月刊誌『地域人』の編集部にいる。自宅作業もするけれど、高性能なスキャナー・プリンター・コピーなどの機器が家にないので西巣鴨まで自転車か徒歩で通勤。ひと間のアパートに機器を導入するか思案中。

この時期の備忘録にとモリが医療の専門家の話をかいつまんで紹介してくれたFBも4月22日でいったんやめると報告。「どうも情報洪水を増やしているだけのような気もするし、自分の精神安定のためにも、SNSから少し距離を取ることに」。同感。

妙に凝った料理が作りたくなる。古い切手を貼った手紙が届くようになる。SNSでは友人からは花の便りがいっきに増えた。町は春。

2020年4月28日  やまさき

谷根千工房 http://www.yanesen.net   E-mail: info@yanesen.com
〒113-0022 東京都文京区千駄木5-17-3 谷根千<記憶の蔵>内 
mobile 080-6670-0142(やまさき)
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