巻頭言アーカイブス

9/2(金)~12(月)
「谷中と、リボンと、ある男」展 を古書ほうろうで

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「谷中と、リボンと、ある男」展案内

2013年9月、ひとつの古い工場が解体されました。
北側に窓を持つノコギリ屋根の工場は、台東区谷中よみせ通りの日常風景の一部でした。
そして、この工場が、明治半ばに建てられたリボン工場だったという歴史もまた、知る人が知るほどのものでした。
工場の保存・活用の道を模索し、解体を機に「谷中のこ屋根会」が結成されました。
ノコギリ屋根の部材の一部はいまも澁澤倉庫のご厚意で大切に保管されています。
部材とともに譲り受けたのは、1890~1920年ころのリボンを主とした織物・染色・機械に関係する多くの古い資料でした。その資料をお目にかけます。


欧州周遊中の渡辺四郎(左)と六郎
(1911年 『鉄道写真2003」より。
広田尚敬氏掲載文より転載)

この100年前の資料を残したのは渡辺四郎。
地域雑誌「谷中根津千駄木」の読者ならば、また、長くこの町にお住まいの方ならば、昭和2年の金融恐慌で銀行倒産の先駆けとなってしまった渡辺銀行、また渡辺治右衛門の名前を憶えていてくださっているでしょうか。
渡辺四郎は倒産時の当主であった10代目治右衛門の弟、現在開成高校のある日暮里4丁目を大正のころに文化住宅、日暮里渡辺町としてひらいた渡辺六郎の兄にあたります。
そして、鉄道ファンならば、明治の機関車をはじめとした日本の鉄道の黎明期を写真で記録した「渡辺・岩崎コレクション」の人であるといえば通じるでしょうか。
それでも、東洋一のリボンを織ろうと研鑽を重ねた渡辺四郎は謎の人です。

資料の全容は、以下の103点です(一部破損がひどく展示できないものがあります)。
○ リボンの織機・製織関連の書物。洋書を中心とする蔵書類
○ 欧州製とみられる各種リボンで構成された見本帖と自社製造のリボン類
○ 渡辺四郎自筆の研究ノート類
資料を分析し、リボンの生産状況や明治~大正の時代と社会背景について調べた結果、この谷中のノコギリ屋根工場が、「日本で初めて洋式リボンを織った場所だ」ということがわかりました。

リボンの国産化は、文明開化の欧化政策、富国強兵といった国策と深く結びついて、男性の帽子の材料として国内製造・生産の拡大につながっていきました。
一方、和装から洋装へと変化していく風俗の中では、女性たちは洋服であれ和服であれ、髪や持ち物の装飾にリボンを用いるようになり、明治、大正と、リボンは女性や少女たちのおしゃれに、無くてはならないものになっていきました。
洋服用の広幅織物が産業として興り栄えて行った一方で、細幅織物といわれるリボン産業も並行して伸長し、谷中がその舞台であったことは、歴史の中の貴重な事実といえるでしょう。


譲り受けた書籍の山

この町の大切な歴史の記録であり証人でもある、渡辺四郎コレクション。
貴重品としてお蔵入りするか、研究者によって活用されるか。どちらにしても地元でのお披露目は最初で最後となります。
明治のロマンである「谷中とリボンの物語」を、ひとりでも多くの方の記憶に留めていただきたい。
会場の古書ほうろうはわざわざ出向く価値のある町の誇りの古書店です。ここで、資料を公開できることが嬉しい。どうぞみなさま、足を運んでくださいね。

2016年8月29日   やまさきのりこ

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