巻頭言アーカイブス

ゆっくり歩こう、もうすぐ花粉も飛び終わり

歩くのにひと苦労。千駄木の高台から日暮里駅まで、人が多すぎてとても自転車では走れない。まったく、この界隈の土日の人出ときたら…いやいや文句ではありません。感嘆です。
いつもより桜(はな)の季節が長かった気のする谷中墓地、敷物の上での花見はできなくなったけれど、車座になる人を気にせずにそぞろ歩くのもいいもんです。今年は丑三つ時に夜桜を愛でながらうろうろしました。此岸のわたしたちと、たまには会いたい彼岸の人もいっしょの時間でした。

人出についてはMさんからも、「今年は国立劇場前の桜、大宮公園の桜、中山法華経寺の桜、谷中墓地の桜、見ました。一緒に見た人の顔を思い出す。でも何と言っても白山神社、近くで静かなのがいい。悲しいのは、私の昼ごはんの定番だった中華兆徳にこの所、行列ができていること。「食べログ」などの評価が高くなり遠くからお客が来るせいらしいが、地元の人間はなかなか入りづらくなった。誰が来てもお客はお客。でもネットをちょっと恨む」とコメントもありました。

ご報告。生まれて初めて論文を書きました。
2013年9月までよみせ通りにあったノコギリ屋根工場の解体時に譲り受けた部材と、文献資料を調査して得た成果のひとつです。調査結果を産業考古学会論文集に投稿し、審査の上、受理。いやぁ、大変なんですね。とにかく慣れないことで四苦八苦でした。
共同研究者は5人(権上かおる、山﨑範子、菊池京子、真鍋雅信、吉田喜一)。女性3名は、在りし日の鋸屋根工場を長いこと町のランドマークとして愛おしく思っていた地元人。そして部材を預かっていただている澁澤倉庫の真鍋さん、そもそも執筆を勧めてくださった東京都立産業技術高専の吉田さん。
谷中にあった建物が、明治27年(1894)築であったこと、日本で最初の洋式動力による絹のリボンはこの場所で織られたことなど、いままで東京都や台東区の歴史資料等では触れられていない、近代製織産業の胎動から黎明期の一端に迫ることができました。 月刊のこぎり屋根 >>

さて、気になっている春の情報もいくつか。

本郷の老舗旅館・朝陽館がこの3月で惜しまれつつ廃業しました。部屋の隅々に創意工夫を凝らした意匠があり、旅館のご主人と若い大工さんの、材を生かした遊び心が伝わります。その旅館の『創業112年「朝陽館」閉館―ありがとう お披露目会』が4月17日に行われます。

すっかり定着した『不忍ブックストリートの一箱古本市』、今年は5月3日です。この日を中心に『不忍ブックストリートweek 2016』冠した催しも町のいろいろなところで行われます。

こちらも定番の旧安田楠雄邸の五月飾り
旧安田邸では毎年五節句の行事をひとつひとつ丁寧に開催していますが、五節句、全部分かりますか? 1月7日の「人日(じんじつ)」、3月3日の「上巳(じょうし)」、5月5日の「端午(たんご)」7月7日の「七夕(しちせき)」、9月9日の「重陽(ちょうよう)」です。さあ、覚えておこう。

根津神社ではつつじ祭りが始まります。根津宮本町会の宮田さんは4月初めから5月の連休明けまで、根津神社を中心に生活のすべてが回るそうです。「町会の役員をしている人は皆そうよ」といいます。まつりの詳細と開花情報はこちらで。

そして、日暮里富士見坂からの番外富士山。問題山積の新国立競技場はやはり原っぱにしておくのがいちばんです。それが先達の望んだこと、いま私たちが望むこと。 『神宮外苑のダイヤモンド富士 2016.2.4/復活した歴史的庭園の景観』  今日も日暮里富士見坂 >>

2016年4月12日   やまさきのりこ

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