巻頭言アーカイブス

震災から半年がたちました。

なくなられた方たちのことを忘れず、いまなお大変な生活を送られている被災地の皆様のことを考えない日はありません。
私たちは地域と被災地を結び、ささやかながらできることをつづけてきました。
それについては前サイト管理者守本善徳さんの協力による谷根千震災字報をごらんください。http://311.yanesen.org/
これは関東大震災の後、上野桜木町にすんでいた宮武外骨が驚くべき早さで『震災画報』を出したことにちなんでいます。でも画像は溢れているのであえて『字報』にしました。

東京電力福島原発はあいかわらず収束どころか、放射性物質を大気に海に拡散しつづけています。東京電力幹部、この原子力開発政策をとって来た経産省幹部も刑事訴追されるべきだと考えます。それにしてもなんという司法のふがいなさでしょう。
政治家は政権たらい回しに終始し、現場を知らない人が復興計画を決め、大企業は火事場の荒稼ぎに走り出す。この国は壊れかけています。
何度も書きますが、これほどの災厄を眼前に見て、まだ原発を断念できないのでしょうか。安定供給でなく徹底的節電に向えないのでしょうか。

いま一番考えなくては行けないことは福島県とその周辺の子どもたちの健康です。
国は、官僚は「外あそびが思い切りしたい」「友だちがいなくてさびしい」「私はふつうに結婚して子供が生めるのだろうか」という子供たちの要望や疑問に答えていません。
5年後、10年後、原発政策になにも責任のないこどもたちが甲状腺がんなどで命を失うことは絶対にあってはなりません。集団疎開でそれが回避されれば『大変だったけどああよかった」ですむのです。
東京でも、いや谷根千地域でも高い数値が記録されています。よそより高い低いで一喜一憂している場合ではありません。私たちは3・11以降、みんなフクシマ人になった。
このことを勇気を持って受け止め、地域から立ち向かって行きましょう。
田中正造の言葉が好きです。「辛酸、佳境に入る」

(森まゆみ)