巻頭言アーカイブス

東日本大震災から2ヶ月が経ちました。

瓦礫の処理は終わらず、まだ多くの方たちが避難所に暮らしています。
東京の住む者にとっては福島の原発事故が壁となってその向こう側への想像力がなかなか発揮できません。
土壌の汚染、海の汚染があって被災者の気持ちは晴れません。原発から立ち上がる見えない放射能が心を曇らせています。

とりあえず日本の原発54基のうち、停止が14基、定期検査が19基、6割止まっていて日本はやっていけてます。一番懸念された静岡県浜岡原発も首相の要請により止まりました。菅政権で唯一よかったことではないでしょうか。原発の構造などはわかりませんが、私たちはこの間、電力会社や政府がいうように安全ではないこと、いったん事故が起これば人々の健康を奪い、大地や海を汚し取り返しがつかないこと、国際的に迷惑をかけ信用もなくし貿易にも影響があることを、心に刻みました。もう原発はいいです。

しかしこの二ヶ月、地域のなかに、新しい連帯が生まれ、被災地の産物を普及し、炊き出しや物資の輸送ルートも生まれました。新しい生き方が始まる、そんな期待にいま心をふくらませています。
富と権力を求める経済至上主義、上昇志向ではなく、まいにち気持ちよくいきあえる関係を大事にしよう。居心地のいい場所を大事にし、なくさないようにしよう。被災地のことも、地域のことも、手をつないでやっていきましょう。
谷中に住んで102歳でなくなられた岡本文弥さんの言葉。
「なんとなくあしたがたのしい」

(森まゆみ)