地域雑誌 「谷中・根津・千駄木」 87号
特集/旧安田楠雄邸公開
2007年6月20日(水曜日)発行 525円
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千駄木のお屋敷へようこそ
千駄木の往来に、大きく開いた木の門があった。
安田財閥に嫁いだ、安田幸子さんがお住まいだった。
一九九六年二月、本駒込の建築家、松塚昇さんと二人で安田邸を訪ねた。
はじめて入る安田邸。火の気のない応接間は、深閑として寒かった。
一階は台所の向こうにも、仏間の向こうにもさらに部屋が続いていた。
二階の和室は若柳流の踊りの稽古場。
檜の置き舞台。床の間に市松人形が三体。
千駄木にもまだこんなお屋敷が残っていたのだ。
幸子さんと応接間でお話しした。
前年十一月にご主人の楠雄さんが亡くなられたこと。
この家の襖もカーテンも調度品も、大正七年の建築以来変えていないこと。
そして、
「ここを老人の憩いの家にでもしたいんでぁんすが、
冬が寒くてこのままでは使ってもらえないでしょう。
この家を残すよい方法はないんでぁんしょうか」
春、幸子さんとともに安田邸の保存活用をめざそうと
「文京歴史的建物の活用を考える会」(通称たてもの応援団)が発足。
こうして、安田邸三度目の人生が始まった。
──仰木ひろみ
■旧安田邸は、「豊島園」の創始者である実業家・藤田好三郎氏が1919年(大正8年)に建築したもので、旧安田財閥の創始者・安田善次郎の娘婿・善四郎氏が大正12年に買い取り住居とした。1996年8月22日、建物と庭園が安田幸子氏より財団法人日本ナショナルトラストに寄贈され、1998年3月、東京都の名勝に指定された。現在、週二回公開(水/予約公開、土/一般公開)されている。 [東京都文京区千駄木5-20-17]
地域雑誌「谷中・根津・千駄木」 87号 目次
目次─地域雑誌「谷中・根津・千駄木」其の八十七 二〇〇七・初夏
◎特集/旧安田楠雄邸公開
千駄木のお屋敷へようこそ
◎そんなことまで話していいの?
蟲好きの文学者-岸田國士からカブトムシまで
対談 奥本大三郎+岸田衿子
◎美男が美女を描く
シンデレラ・ボーイ、蕗谷虹児-蕗谷龍生氏に聞く
◎谷中植物園3
香りの王者、梔(クチナシ)─西岡直樹
◎千駄木、わが家の話
桂弁三と桂ユキのこと─桂博澄氏に聞く
◎少年の日
神明町の漢方薬局-竹川光一
◎前代未聞の大学疎開
日本医大、鶴岡へ-新田基子
◎おいしい店見つけた
栄児家庭料理─中濱潤子
◎谷根千番外地列伝
若き日の与謝野鉄幹と浅香社─森まゆみ
◎若き日の証拠写真
爺さんにもこんな昔があった!?─坂口和澄
◎続・谷中墓地桜並木の石碑と霊園再生計画
其塔碑は即ち魂魂の憑る所[後編]
●剪画「旧安田楠雄邸」─石田良介
●マンガ谷根千秘録15─つるみよしこ
●確連房通信
●おたより
●谷根千ちず
●編集後記
●お知らせ
題字/本郷松しん
校正/小野寺由紀子
助っ人/守本善徳+林美子+青木智子+竹川光一
組版/スマイル企画(中溝亜貴子+丸山勇)
印刷・製本/三盛社
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