くまのかたこと - 旅の宿編

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古里観光ホテル(2003)

鹿児島市は県庁所在地でビルも多いのに15分船に乗って桜島の港につくと、そこはもう火山岩の赤茶けた山だった。日本一大きい桜島大根と日本一小さい桜島みかんがある。迎えの車に乗って古里観光ホテルへつく。フロントやロビーまわりは昭和40年代そのままとあか抜けないが、ナナメに降りるエレベーターで浜辺の露天風呂にいくとすばらしい。白い衣を着ての混浴なのだが、左に大隈半島、右に薩摩半島がのび、暮靄ののち漁火がきらめき、空が暗くなるまで湯につかっていた。
「私は古里をもたない」と「放浪記」の出だしに書いた林芙美子の母は、まさにこの古里温泉の娘で、ここで芙美子を身ごもったそうである。子どもの頃ここに預けられたこともあったとか。

森まゆみ
2004年5月14日(金曜日)公開

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