くまのかたこと - 旅の宿編

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二股温泉 湯小屋旅館

ここは泊まったわけじゃないが、印象が強い。あるゴールデンウィークに、「りりおむ」という谷中の喫茶店にたむろした画家達の足跡をたずねて、会津の山の中を友だちと車を走らせていた。

そうしたら、つげ義春の漫画にあった、かの秘湯二股温泉に出てしまったのである。

川があって橋があって、古びたつぎはぎの宿がある。その川をせきとめて中洲みたいに岩風呂が作ってある。これは人の手を加えたものか。たぶんそうだろう。しかしよく出来ている。川を裸で渡って、渓流の中の湯につかっていると、自分が流れにさらわれていきそうだ。女三人、天と地の間にあって、何の飾ることなく浮世の噂もしゃべる気がせず歌ばっかり歌っていた。

その近くの山の上にイワナの養魚場、沼の家があって、私たちはそこで三日、イワナのさしみ、からあげ、塩焼きを食べて過ごした。ここも極楽である。

森まゆみ
2003年5月30日(金曜日)公開

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