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くまのかたこと - 旅の宿編

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真野 伊藤屋旅館(2004)

6月5日、太膳神社の能舞台で薪能が見られるというので真野に宿をとった。なかなか工夫がある宿で、値段(1泊1万円)のわりに食べきれないほどの料理が出た。風呂もいいが、閉め切った浴室にスピーカーで音楽を流しているのはいただけない。圧迫感がある。

お能はすばらしかった。杉木立の中、茅葺きの能舞台カエルの合唱と雨音の中で謡かすれがすれだが、そこが幽玄。ここらの集落の人が総出演で、佐渡では農作業をしながらも謡を口ずさむのだという。世阿弥が流された土地だからか、佐渡金山奉行大久保長安が伝えたものか。

朝、NHKのクルーが同宿しているのを知る。お能の取材かと思ったら、曽我ひとみさんの張り番だそうで。護衛が2人ついているという、私より若い女性の、過酷すぎる運命の中で強く生きている彼女を尊敬する。乗ったタクシーの運転手が客を喜ばせようと「連れ去られた現場はこのあたりです」とか、「生家の前を通りましょうか」といって遠回りしようとした。もちろんそんな気にならなかった。町は、利用できるものはなんでも観光にしてしまう。騒ぐだけ騒ぐマスコミも悪いのだけど。

森まゆみ
2004年7月16日(金曜日)公開

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