仕事が終わると一人になって温泉へもう一泊したい。岡山三湯湯原温泉に日本一大きい露天風呂があるというので行く。よい宿が多く迷ったが「八景」はちょうどひなまつりの特別大サービスで、女性は半額の1万円で泊めてくれるという。
部屋、料理、風呂、申し分なかった。ことに屋上の露天風呂は照明もすばらしく、雪見もできて最高だった。でもこの宿のイチ押しは美しいおかみのがんばりである。聞くことによると、大阪の不動産屋のお父さんが、不動産は女性向きではない、と競売にかかったこのホテルを買ってくれ、３０代半ばでおかみになって少しずつ手を入れ食事を工夫し常連客を増やしてきた。
彼女の率いるスタッフがこれまた営業的でなく、さっぱりと親切で感心。夜はビデオを貸してくれる。ずっと見たかった「青いパパイヤの香り」を楽しむ。朝起きると昨日はしっとり和服のおかみがスカートにエプロンで朝食を運んでくる。岡山から2時間の山の中でもリピーターが多いわけである。

森まゆみ
2004年7月9日(金曜日)公開