民宿 塩島館
徹夜の疲れにまどろんで、目が覚めるとあずさ3号は雪の中を走っていた。陽もないのに雪の白さがまぶしい。白馬の駅からスキー場の洒落たロッジ風の建物をぬけて15分、重要伝統建築物郡保存地区に指定された青鬼集落がある。のぼせ建てという建て方で、戸数14戸、うち冬も山上に暮らすのは4戸。
山を降り、塩島館に泊まる。着いた時は凍るような寒さ、二方が窓でしんしんと冷気が入り込み、まいったなあ、と思ったが宿のおばちゃんはまこと温かかった。私だけのために手洗いのわきにストーブを二つもつけてくれ、朝は手作りのクレープ、煮物、漬け物、大学芋とどっさり「食べて食べて」。このかざらないもてなしはホテルではありえない。目が輝きお肌はぴかぴか、「ここは水がいいからねえ」というが、都会人にあるストレスがみじんも感じられない美しさ。帰りに、婿さんの里からのりんごを持たせてくれた。
うまかった。
森まゆみ
2004年3月25日(木曜日)公開
|