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くまのかたこと - 旅の宿編

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長野 善光寺門前藤屋旅館

大学に合格した春に、母とアンズの白い花を見にきて、長野で善光寺の宿坊に泊まった。ユースホステルに900円ほどで泊まれたのはよかったが、畳の入れ替えでバタバタしているし、風呂は外の銭湯へ行ってくれといわれるし、夕食は冷奴にふちの赤いバサバサしたハムサラダと情けなかった。母に気の毒をした。

今度は長野在住の歌人のインタビューの帰りで、善光寺の前の古い看板建築の宿に一人で泊まった。通された部屋は広くなかったけれど、窓から庭が見え、卓も軸も絵も、すべて由緒あるもので、真新しい旅館にはない深々とした落ち着きがあった。応接室のビロードの椅子やグランドピアノ、暖炉、階段の手摺、すべてこよなく懐かしい。疲れた時はまた行きたい宿である。その後、この宿を会場に開かれた町づくり寺子屋で講演し再宿できた。

森まゆみ
2004年3月9日(火曜日)公開

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