奥鬼怒加仁湯 (1971)
高校二年の夏休みに父が奥鬼怒へ行こうといいだし、バス終点の夫婦渕から二時間近く歩いてひなびた山の一軒宿、それも旧館の方と指定して泊めてもらった。
降るような星のもと、広い露天風呂に入り放題だったのが忘れられない。父は、おいしいと、夕食の川魚の塩焼きをお代わりした。
家族5人、ハイキング姿でリュックをしょって写した写真は、これが最後である。反抗期だった私は、家族旅行なんてやってらんねえという感じで、どの写真もそっぽを向いている。ここから尾瀬の方までまた上ろうかとかなり歩いたが、各人のペースに差がありすぎ、私が水筒の水を勝手に全部飲んでしまったことから親子げんかとなり、途中で引き返した。そんなことでも忘れられない宿である。日光沢も手白沢もあれから三十年近くたってかなり変わったと聞く。
森まゆみ
2003年6月16日(月曜日)公開
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